このポストが少し話題になっていました。
「ファンコット」を作りたいと思う人は、原理原則を頭に叩き込んでください。
— プレミアムブラック圧 (@RNbasis) April 23, 2026
もうこれは絶対の掟です。
①ビートを刻め、もう大丈夫と思った以上に刻め
②troublejazz snarerollを使うな
③ビートを刻め
④カウベルと声ネタは小さく、ライドやハイハットも足す
⑤スネアを重ねて大きく
⑥ビートを刻
このポスト自体は明らかに(有識者による)ネタツイですが、Funkotにおけるビートの刻みやフィルの使い方が重要なのは確かだと感じています。
今回は、Funkotのフィルに着目する面白さを個人的な視点から書いてみます。
※本記事は音源の引用が多いため、視聴できる環境で読むことをおすすめします。
この記事における「ドラムフィル」とは
最初に、この記事における「ドラムフィル(または単にフィル)」の定義を明確にしていきたいと思います。
一般的にフィルとはドラムのフィルイン(曲の区切りや展開前に入る装飾的なフレーズ)のことを指します。
DJ Ronny - I Like It Loud 2012(X-TREME HARD COMPILATION VOL.5収録)のイントロ33小節目から16小節を取り出した音源です。
(現代的なFunkotは基本的に16小節ごとに展開します。)
8小節目と最後の2小節(15~16小節目)に着目して聴いてみてください。
Funkotのビートのキックやスネアが連打され、そこに様々な音が乗っていることが確認できます。
こちらは8小節目を手持ちのサンプルで打ち直したものです。
ビートの刻みが「ドッドッドッタッドッドドタタドッ」、その上にDRUM SNARE ROLL 3(Funkotで定番のフィルループの一つ)が乗っています。
このようなビートの刻みとループ、さらに言えばFX(例えばテープストップ音)との組み合わせを私は大まかにフィルと呼んでいます。
Funkotでは、一つの展開のうちの8小節目及び16小節目にフィルと呼べる構造が入ることが多いです。
なお、あくまでこの記事内での便宜上の呼称であり、現地で一般的な定義というわけではありませんので、ご留意いただければと思います。
いろいろなフィル
フィルの概念について説明を終えたところで、以下にフィルが特徴的な楽曲をいくつか挙げていきます。
まずは、Apin17 - Water Canonのサビ周辺32小節です。
特筆すべきところと言えば、7小節目からキックを連打し始めて8小節目のフィルへの期待感を作っているところや、24小節目で音を抜いて「ピュンピュン」というFXでキメを作っているところなどでしょうか。
それ以外の箇所でも先ほどのI Like It Loud 2012とはかなり違った雰囲気を感じられると思います。
続いてはRickoCyber - Anthem #1のサビ後16小節です。
こちらは基本的な8小節おきのフィルだけではなく、4小節目の最後にビートを抜いてFXを入れていることが特徴的です。
毎回こうだとやや食傷気味になりそうですが、時々このような展開を入れるとアクセントになりますね。
Riino 105 - Sound Of My Dreamのイントロの一部です。
Riino(現Rino)の昔の曲はこの8小節目の非常に細かくキックを連打したフィルが多用されており、独特の個性を作っていました。
最後に、インドネシアの中でも非常に独特なフィルを作るNdeYogaのBukan Pengimis Cintaの一部を紹介します。
こちらはイントロにおいて、他の曲ではあまり聴かない1~2小節目にビートの刻みが存在します。
8小節目、14小節目~の刻みもかなり細かく、独自性が高いです。
同じ曲のボーカル部分で、これはフィルというより展開に合わせてビートを刻んでいるという感じですが、非常に印象的なので紹介します。
フィルに着目することの面白さ
1. 曲に個性を出せる/見い出せる
Funkotは基本的に定番のサンプルを使いながらどれだけ楽曲にオリジナリティを出せるかが勝負のジャンルと言えます。そのため、ドラムフィルは楽曲の個性を左右する重要な要素だと思います。
もちろん展開やメロディなどの大前提となる評価ポイントも多数ありますが、フィルの個性はその曲特有のグルーヴに関わる重要な箇所だと感じています。
2. 作者を推定する材料になる
Funkotのトラックはその性質上、作者の名義がわからない状態で出回っていることがあります。そういった場合、作者を判断する上でフィルの個性がとても役に立ちます。
もちろん、最終的には他の要素も含めた総合的な判断になりますが、先ほど挙げたApin17やRiinoのようにフィルの個性が強いリミキサーであれば、大きな判断材料になります。
3. 流行や系譜を知れる
一番最初に紹介したDJ Ronny - I Like It Loud 2012で使用されているフィルは、インドネシアで古くから活動しているDJ Andyが制作したプロジェクトファイルのもので、登場してから現在に至るまで現地で流用され続けている非常に主流なスタイルの一つです。
(Andy率いるNRC DJ Teamの面々が特に使用することもあり、私は俗にNRCスタイルと呼んでいます。)
ちなみに、このI Like It LoudそのものがそもそもRonnyではなくAndyの曲だという話もあるのですが、非常にややこしいので一旦無視してもらえればと思います。Ronny本人の作風はAndyとはかなり異なります。
こういったプロジェクトの流用がインドネシアでFunkotを作っている方々の間で時折行われるため、
- 誰が誰に曲作りを教わっている
- 誰のプロジェクトが出回っている
- 以前は別のスタイルだった人が、最近別の系統のプロジェクトを使い始めた
などといった背景を想像しながら曲を聴けるのもFunkotの面白さの一つです。
(これはもはやフィル単体の話ではありませんが…。)
プロジェクト流用まで行かなくても、フィルから影響関係を推測することはできます。
たとえば955期のAndyは当時のApin17に影響を受けて7小節目のキック連打を取り入れたように思えます。
他にも、Use L3がキックを8~16分で連打する時にクラッシュを重ねるのはDealyの影響ではないか、といった推測もできます。
こうした視点で見ると、フィルを観察することで、リミキサー同士が互いに与え合ってきた影響関係をある程度読み取ることもできるのではないでしょうか。
(固有名詞は一例なので、詳しくわからなくても雰囲気を掴んでいただければ大丈夫です。)
おわりに
今回はFunkotのドラムフィルにフォーカスした聴き方、楽しみ方について個人的な所見をまとめてみました。曲を聴く際や楽曲制作の参考になれば幸いです。
ちなみに、「もう大丈夫と思った以上に」刻む必要は特にないと思います。逆に、8小節目に刻みがない曲もあります。
曲を作っている方は、まず好きな曲のフィルを真似してみると、そのあたりの塩梅が掴めてくると思います。



